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【判例その他】(承前)調査報告書とか判例の原文を紹介してみる

(約9,000字)

 

PCが壊れて、修理に出して、つい先日、戻ってきました。

 

 

 

その間、打ち物を最低限に減らすよう手配して、その最低限のブツは一代前のPCくんで乗り切りました。
多少の不便はありましたが、まぁ何とかなって良かったです。また何より、データが無事でよかった。保証期間中でお金もかかりませんでしたし。
ただ、また間が空いてしまいましたね…。投稿直前だったのだけれど。

 

 

 

気が付けば9月とか、もう、我に返って呆然とする感じです。
我が修習地にはLRTが開通したし、隔世の感すらあります。

 

 

 

 

 

さて、以下が、その投稿直前だった記事です。
出だしからして時の経過を感じます。

 

 

 

 

 

 

 


ニュースが、某中古車販売業者さんの件で持ちきりである。

 

 

 

 

 

 

公益通報者保護特別委員会について

僕は東京弁護士会の、公益通報者保護特別委員会というところに所属している。公益通報者保護法という法律に関わる委員会である。
公益通報」は、一般的には「内部告発」と表現した方が分かりやすいかもしれない。組織の不正行為・違法行為を認識した者が、当該事実(不正・違法があった事実)を、当該組織自身や監督行政庁、マスコミ等に伝えるなどして是正を図り、公共の利益や安全を守ろうとする行為をいう。日本では1990年代後半以降、内部告発により大手企業や官庁の不祥事が摘発される事態が頻発したことを受け、イギリスのPublic Interest Disclosure Actに倣い、2004年に公益通報者保護法が成立・公布された。
文字どおり、上記のような「公益通報」を行った方を保護するための法律である。
何から保護するのか、というと、当該組織の報復的不利益取扱いからである。

 

公益通報者保護法は、施行以来数次の改正を経ている。近年(2020年)にも改正があり、同改正法は昨年(2022年)6月に施行されたばかりである。
その中で、事業者に対し、内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備等(窓口設定、調査、是正措置等)が義務付けられた。

公益通報者保護法11条(事業者がとるべき措置)
1項 事業者は、第3条第1号及び第6条第1号に定める公益通報を受け、並びに当該公益通報に係る通報対象事実の調査をし、及びその是正に必要な措置をとる業務(次条において「公益通報対応業務」という。)に従事する者(次条において「公益通報対応業務従事者」という。)を定めなければならない。
2項 事業者は、前項に定めるもののほか、公益通報者の保護を図るとともに、公益通報の内容の活用により国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図るため、第3条第1号及び第6条第1号に定める公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならない。
3項 常時使用する労働者の数が300人以下の事業者については、第1項中「定めなければ」とあるのは「定めるように努めなければ」と、前項中「とらなければ」とあるのは「とるように努めなければ」とする。
(4項~7項 略)

が、この内部通報体制をうまく設計・運用するのは、とても難しい。
重責を担う通報受付担当者をどう確保し育てるか、というのも重い課題だが、より根本的な、制度内在的問題もある。
すなわち、企業風土として違法・不正行為が横行している場合ほど内部通報体制・通報者保護体制整備の必要性が高いわけだけれど、一方で、そういう会社ほど、(いわば)まともな体制構築・運用を期待するのが難しい、という問題である。

 

当委員会の活動内容はいろいろあるのだが、いわば基礎研究的なものの一つとして、企業不祥事が明るみになった事例中、調査委員会による報告書内で内部通報体制に言及があった事案の分析、というものがある。
要するに、失敗分析である。内部通報体制があったのにうまく機能しなかった実際の事例を活用し、会として、知見を蓄積するとともに今後の提言等に活かしていこう、というもの。
僕も少し前、特定の事案を割り当てられ、会内で発表した。大変だったが*1、無論、僕自身の勉強にもなった。
ちなみに…
上場会社の第三者委員会に関する情報サイトとして第三者委員会ドットコムさんというところがあり、各調査報告書をまとめてくださっています。頭が下がる公益的活動だと思います。
・調査委員には弁護士が入ることが多いため、日弁連は、会として、目指すべき第三者委員会の在り方を示したガイドラインを出しています。三者性を担保する目的から作られたものです。

 

…とまぁそういうわけで、今回の中古車販売業者さんの件も、そういう観点から興味があった。
社長さんが「調査報告書を公表すればいい(記者会見とかは不要だ)と思っていた」等と仰っているらしいと聞いた時から。

「ほう。調査報告書があるんすか。」、と。どんな代物なのかな、と。

なので、見てみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…これは、あかんやつですね…。

 

 

 

 

 

 

 

いや、「最初から分かってたでしょ」、と言われればそうなんですが。
「第8 不適切な保険金請求が行われた原因の分析」、特に「2 コーポレートガバナンスの機能不全とコンプライアンス意識の鈍麻」の箇所は、読んでいて、ちょっと絶句してしまった。
いくら非上場とはいえ、会社法上の大会社で、ここまでメチャクチャだったか…と。

 

弁護士は、企業様の顧問として、持ち込まれる法律相談に頭を抱えることがよくあるわけだけれど。
今回のような事案に接すると、そもそも、コンプライアンス確保・法的リスク低減のために顧問料というコストを支払おう、という発想自体、本来はナチュラルに発生するものではないのだ、ということに思いを致さざるを得ない。

 

会社にせよ社会にせよ、平等や公正性は黙っていれば宙空から降ってくるわけではないのですよね。だからこそ弁護士という職業が必要でもあるわけで。
まぁ、ふだんは逆に、弁護士ができることって多くはないなぁ…と壁にぶち当たって悩むことの方が多いわけだけれど。
人様の遵法意識を自明と捉えがちな自身を戒めつつ、時にはできることの方にも目を向けていきたいものだ、などと思った次第です。

 

 

 

なので、その一環、公益通報に関わる委員会活動をしている一弁護士として、以下、少しだけ、調査報告書の内容を抜粋してご紹介してみます。

 

 

 

例の件の調査報告書

報道等でも取り上げられることの多い次の一節ですが、

報告書の中で認定されている事実は、大要、以下のとおりです(報告書p27~28)。

正直、気持ちよく読める箇所ではないです。「他人事のようなこと」だの「反省」だのと問題を矮小化された上に責任転嫁され、Hさんは無念だっただろうな、と思います。ただ、遺憾ながら、この種の問題のすり替えは、内部通報制度が機能不全に陥っている現場で、しばしば発生していることでもあります。

しかしながら、改正法が施行された現在は尚更、内部統制システムの一柱を成す内部通報体制の構築/運用上の不備は、すなわち取締役(会)の義務として、役員等の任務懈怠を構成し得ます。つまり、会社に損害が発生した場合には賠償責任の対象となり得ます。
もちろん、消費者庁の調査が入ることもあるでしょう。

 

 

事業者の皆さん、内部通報制度は、ただ表面的に構築・設置してみただけでは、ほぼ、「適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をと」った(公益通報者保護法11条2項)ものとは認められないとお考えください。
上記義務の履践があったと認められるには、適切に運用するための配慮が不可欠です。

制度を周知し、通報を奨励しましょう。通報が多くなる事態を否定的に捉えるような発言は控えましょう。
通報対応者教育や通報者への評価について、適切な人事的配慮をし、そのこともまた、社内広報しましょう。

 

今回の件でも、再発防止のためには、内部通報制度の整備が必要である旨、指摘されているところです(報告書p40)。



 

個人の皆さん。
公益通報関係で何かありましたら、遠慮なく、当会無料相談のご利用も検討してみてくださいね。

 

 

 

 

 

 

 


さて、以下。前回の続きとして、LGBTQ+関係についてです。

 

 

LGBT理解増進法について

まず、本年6月16日にLGBT理解増進法が成立し、同月23日に公布・施行となった。
正式名称は「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」、条文はこちら

 

全部で12条しかなく、国の責務を除けば、書かれているのは理念と努力義務で、それを超えて私人の法的権利義務に影響を与える法律ではない。けれども、だからこそ逆に、いわば純粋に理念をめぐる争いが顕在化したとも言える。

問題となったのは保守派からのバックラッシュ的なものであり、僕の承知しているところだと、

そもそもの法律名称のところで、もともと使われていた用語である「性自認に対し主観的すぎる、という批判が入り、これがジェンダーアイデンティティに変更された
3条の条文
性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策は、全ての国民が、その性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、性的指向及びジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別はあってはならないものであるとの認識の下に、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを旨として行われなければならない。」
中「不当な差別はあってはならない」という部分は、もともとは「差別は許されない」という表現であったところ、同表現下では「訴訟の濫発」が懸念されるという声が起こり、現在の表現に変更になった
12条
「この法律に定める措置の実施等に当たっては、性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする。この場合において、政府は、その運用に必要な指針を策定するものとする。」
は、条文自体がもともとなかったところ、保守派からの要請で入れられた

という3点(他にもあったらごめんなさい。)。

 

(①)本法は、特定の性を自称しさえすればそう扱われるべき、などという法律ではないはずだ。当事者もそんなことは全く求めていない。自称・僭称と『自認』は違う。そんなところから無用に警戒され誤解され、法律名称にカタカナ表記を持ち込むレベルの例外的扱いを受けなければならないのか。

(②)「不当な差別」とはどういう料簡か。不当でない差別などあるのか。「差別は許されない」ことに異論などあり得るのか。差別を受けて訴訟を提起するのは、何か「濫発」と評価されなければならないのか。

(③)セクシャルマイノリティはマジョリティを不安に陥れる存在なのか。「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意する」とは、そういう前提に立っていなければ出てこない発想・表現ではないのか。

…要するに、かえって現状の差別意識を追認しているような法律に堕してしまっているではないか、内容が「理解増進」と真っ向から背馳しているではないか、と。*2

 

で、そういう声が湧き上がっている正にその最中に、性同一性障害の診断を受けた方(生物学的性別は男性、精神的には女性)に女性トイレの使用を認めなかった扱いを違法として取消請求等を認める最高裁判決が出た。7月11日である。

 

 

 

7月11日の最高裁判決について

これはさんざん言われていることなのだが、今回の判決はいわゆる事例判断というものであり、「今回の事例ではこう判断しました」、と言っているに過ぎない。
一般論として
性自認が女性の方については、(性別適合手術を受けていなくても、)女性トイレの使用を認めなければ違法だ」
などと言った判決では全くない(このブログで人様にお伝えしたいことがあるとすれば、これに尽きる。)。
もちろん僕は判決を読んだが、「最高裁、めちゃくちゃ気を遣ってるな…」という感想しかなかった。
なので、この判決に対し「判事たちは最高裁判決の重みを分かってない」旨批判する向きについては、端的に誤りだ、と思う。
判決を読まないで言ってるか、読んだ上で敢えて曲解して言ってるかしか考えられないし、いずれにせよ、客観的論評に仮装したお気持ちの表明でしかない。

 

 

 

逆に、そういう仮装じゃなくて、率直な感覚であることを自認した上での反対論陣の方々による意見表明については、それが明らかになること自体は、積極的に受け止めるべきなのかな、と思う*3。議論というか、相互理解の前提を提供するものですからね。

で、今回SNS上で目にしたご意見の中に、
「女子トイレに体が男性の人がいたら怖い。これが分からないなら心が女は嘘だと思います。」
という旨の呟きがあって*4、何というか、その感情についてどう思うか以前の問題として、「なるほど」と腹落ちした。
もちろん僕は男性ですから、体が男性というだけで犯罪者予備軍みたいに見られるとすれば心外だし不快でもあるけど*5、それが女性の一般的・通有的な感覚だ*6、という認識を前提にしないと話は進まない(はずだ)しな。

 


…と思うので、僕に、上記ご意見を批判する意図は、全くない。*7
このことは先に明確に申し上げた上で、一点だけ注釈を付け加えたい。それは、

「今回の判決は、(事例判決である以前の話として、)そもそも、LGBTQ+の方を直接の名宛人として『女性トイレを使っていいですよ』と述べた判決ではない」

ということであり、

「『トイレの管理者が使用を禁止したのが違法だ、と述べる』ことと、『利用者に使用を認める』こととは全然違う」

と言い換えても良い。

 

 

今回の事案というのは、ものすごく雑に要約すると、

  • 性適合手術を受けていない、性自認が女性の方が、
  • 職場(経産省)における女性トイレの自由な使用(を含め、原則として女性職員と同等に処遇すること)を認める措置を要求したところ、
  • 職場(正確には、人事院)が、当該要求を認めない旨判定したため、当該判定の取消し及び国家賠償を求めて訴訟提起し、
  • 最高裁が当該請求を認めた、

というものです。つまり、判決の直接の名宛人は国であり、これも雑駁に一般化するとすれば『職場』、です。
で、繰り返し述べているとおり本判決はあくまで事例判断なわけですけど、百歩譲ってその点は措いておくとして、仮に、本判決を契機として、日本の各『職場』において従来の扱いを見直す動きが始まったとしましょう。

 

どうなるか。

 

当然、各職場が一定の要件の下で*8上記のような方の女性トイレ使用を認め、当事者の方々がそれに則って使用申請する、という流れになるでしょう。*9

 

何が言いたいのかというと、仮に本判決の事例判決性を横に置くとしても、

「判決の結果として女性トイレの使用が新たに認められるとすれば、それは、『職場を相手に正規の手続を踏んで使用を申請する意思がある当事者』だけだ」

ということです。
「体が男性の人」という括りの場合と比べ、犯罪的意思を有する人間が紛れる可能性は相当に低いと言えるはずだと思います。


もちろん、判決を正面から読解する限り、という話ではあって、意図的に曲解した人間が建造物侵入を犯す可能性は残るわけですけど。
でもそれは、有り体に言って、判決があろうがなかろうが同じなのであって、判決を批判する理由にはならないはずです。
注でも前述しましたけど、いかなる立場の方であれ、もしもすべきことがあるとすれば、それは判決の批判ではなく、誤解曲解を防ぐための周知啓蒙ではないのかな、と。

 

 


…さて。
そういうわけで、最後に、判決の内容を簡単にご紹介したいと思います。


事案の概要

最高裁自身による簡潔なまとめは次のとおり(判決p1「1」)。

「本件は、一般職の国家公務員であり、性同一性障害である旨の医師の診断を受けている上告人が、国家公務員法86条の規定により、人事院に対し、職場のトイレの使用等に係る行政措置の要求をしたところ、いずれの要求も認められない旨の判定(以下「本件判定」という。)を受けたことから、被上告人を相手に、本件判定の取消し等を求める事案である。」

国家公務員法86条の条文は、これ↓ですね。

国家公務員法86条(勤務条件に関する行政措置の要求)
 職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事院に対して、人事院若しくは内閣総理大臣又はその職員の所轄庁の長により、適当な行政上の措置が行われることを要求することができる。

事実経過につき多少詳しく見ると、こんな↓感じ。

 

 


事例判断だということ①

ところで、判決理由は全部で4つの意味段落から成っており、次のような構成になっています。上の「事案の概要」で書いたことは、このうち「1」と「2」から適宜抜粋した内容です。

「1」:事案の要旨(事案の要旨を一文で表現したもの。「本件は、~事案である。」)
「2」:認定事実の概要(「1」よりは詳しい事案の概要。「原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。…。」)
「3」:原審(高裁)の判断(「原審は、上記事実関係等の下において、要旨次のとおり判断し、本件判定部分の取消請求を棄却した。…。」)
「4」:最高裁の判断
「5」:結論(「以上と異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原判決中、本件判定部分の取消請求に関する部分は破棄を免れない。…よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。」)

で、このうち「4」で書かれている内容の枠組みは、次のとおり。

(柱書)「しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。」

(1)「国家公務員法86条の規定による行政措置の要求に対する人事院の判定においては、広範にわたる職員の勤務条件について、一般国民及び関係者の公平並びに職員の能率の発揮及び増進という見地から、人事行政や職員の勤務等の実情に即した専門的な判断が求められるのであり(同法71条、87条)、その判断は人事院の裁量に委ねられているものと解される。したがって、上記判定は、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したと認められる場合に違法となると解するのが相当である。」

(2)「これを本件についてみると、…。」

(3)「したがって、本件判定部分は、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるというべきである。」

法曹関係者(行政法学習者)が読めば明らかなのですが、実は、(1)の部分は、内容があるようで実質、ありません。*10ほぼ、当たり前のことを書いているだけ。
で、(2)はいわゆる「当てはめ」で、((1)で立てた)法規範を事案に当てはめている部分。(3)は結論。

 

つまり、この骨子を見るだけで既に、(たぶん)この判決が『事例判断』だ(ろうな)、ということが分かるわけです。
事案の評価に入る前に有意な一般論を立ててないんだから。*11

 

 

 

事例判断だということ②

とはいえ、当てはめの中で、いわば下位規範のような形で一般論っぽいことが書かれている可能性も一応、あり得ます。事実を評価する場合の、重み付けの原則みたいなものとか。
ただ、結論から先に言えば、上記(2)では、そういうことは全く、書かれていません。

事情を引っ張った上で、

「以上によれば…上告人に対し、本件処遇による上記のような不利益を甘受させるだけの具体的な事情は見当たらなかったというべきである。」

と述べているだけ。

 

だから、やっぱり、本判決は、徹頭徹尾、事例判断です。
本件の事情の下における判断を述べているだけで、何ら一般論は含まれていません。

 

具体的内容は、次のとおりです。




 

事例判断だということ③

判旨は以上なのですが、本判決は、裁判官5人全員が補足意見を付けている点でも、注目に値するものです。
で、最後に書かれているのが裁判長裁判官今崎幸彦氏の補足意見は、次の一文で締めくくられています。

なお、本判決は、トイレを含め、不特定又は多数の人々の使用が想定されている公共施設の使用の在り方について触れるものではない。この問題は、機会を改めて議論されるべきである。

すごい念の入れようだな、と思いますし、最高裁が、100%意識的に、事例判断としか読めない判決文を作ったことが伺える部分でもあります。

 

 


個々の裁判官が本件についてどう考えて判旨の結論に至ったか、多少なりとも率直に書かれているとすれば、それはむしろ補足意見です。
興味のある方はぜひご一読ください。

個人的には、渡邉惠理子裁判官の補足意見(判決p8~p11)が、綿密重厚で読み応えがあると思いました。

 

 

 

 

 



*1:割り当てられた事案の報告書が500ページ超えてるの知ったときは、まぁ、正直、「げっ…」と思いましたね 笑

*2:私見を言うなら、全くもってそのとおりだと思う。実害が生じるような解釈運用がなされないことを切に願う。

*3:もちろん、それこそ言い方によると思いますが。

*4:リンクは敢えて貼りません。

*5:女性トイレに間違っては入っちゃう可能性は低いけど、普段使わない駅で間違って女性専用車両の待ち列に並んじゃったことならあるしな。幸い乗る前に気づけたけど、あのときのゾッとした気持ちは、逆に男性じゃないと分かっていただけないだろうな、と思う。

*6:かなりの数のいいねが付いてましたからね。

*7:本文で書いたとおり、ご懸念の事態が増加することになるとすれば判決を誤解/曲解した場合ですから、発言者の方が警戒すべきは、判決それ自体ではなく、判決の誤解・曲解であるはずです。で、僕が懸念するのもまさしく判決の誤解・曲解ですから、むしろスタンスは共通しているわけで。

*8:要件は間違いなく定めるでしょう。「性自認が女性ならウチでは手続なしで女性トイレを使っていいよ。」なんて雑なことしたら、かえって凄いことになるのが目に見えて明らかなわけですから。

*9:しつこいですけど、これ、本件判決が事例判決であることに敢えて目を瞑った上での仮定の話ですからね。誤解されたくないからしつこく言いますが。

*10:国公法86条の判断が人事院の裁量事項だ、という点にはさすがに争いはないでしょう。

*11:仮に立てるとしたら、例えば、「原則としては裁量が認められるものの、性自認に基づくトイレ使用を求める権利は人格権との連関が強度であるから、同裁量は一定程度羈束される」とか。